米中対立が深まる中で孤立するアメリカ
ワシントン発。トランプ大統領は、中国との貿易戦争を「一対一」の勝負へと持ち込みたい意向を強めている。しかしその過程で、長年の米国のパートナー諸国との関係が揺らぎ始めている。145%という異例の対中関税を発表する一方で、他国への関税は一時的に90日間停止。だが、この不安定な政策運営により、米国は同盟国の信頼を失いつつある。
保護主義の裏で進む中国の外交攻勢
トランプ政権の保護主義的な姿勢に対し、中国は「市場開放」と「多国間協調」を強調。EUや韓国、日本、ASEAN諸国などとの外交を活発化させており、「覇権主義を拒否し、公平な貿易を推進する」とアピールしている。
中国の李強首相は、EU委員長フォン・デア・ライエンとの電話会談で「中国とEUは互いに最も重要な貿易相手だ」と強調。ASEAN諸国との間でも、サプライチェーン協力の強化や中小企業支援の必要性について合意が進んでいる。
米国のリーダーシップは後退?
一方、トランプ政権の姿勢に対し、民主党議員からは批判の声が相次ぐ。下院中国共産党特別委のクリシュナムルティ議員は「国際的なリーダーシップの放棄であり、中国を利するだけだ」と非難。国際機関からの脱退や予算削減も相まって、米国の影響力は明らかに低下している。
商務長官のルートニック氏は「大統領はアメリカに集中している」と述べ、同盟強化ではなく個別交渉を重視する姿勢を示したが、それが中国にとっての隙となっている可能性は否めない。
米中「二強」だけが見つめ合う構図
国際経済専門家たちは、今回の関税措置は「中国の孤立を狙ったもの」としつつも、実際には両国の対立が激化するばかりで、他国は置き去りになっていると指摘する。ASEAN諸国は共同声明で「一方的な関税は中小企業に深刻な影響を及ぼす」と懸念を表明したが、具体的な対抗策には至っていない。
今後の展望は?
トランプ政権の孤立路線がこのまま続けば、中国は「協調と市場開放」を掲げる外交で影響力をさらに強める可能性がある。一方、米国は伝統的な同盟国との関係修復を急がなければ、グローバル経済の主導権を失うことになりかねない。
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